農業振興地域制度と農用地区域

農業振興地域制度の目的

農業振興地域制度は、「農業振興地域の整備に関する法律(農振法)」に基づき、農地の宅地化が進行する中にあって、今後とも長期にわたって農業の振興を図るべき地域(農業振興地域)を定めて、その地域に農業施策を計画的かつ集中的に実施することにより、土地の有効利用と農業の健全な発展を図ることを目的としています。

農業振興地域制度の概要

  1. 農林水産大臣が「農用地等の確保等に関する基本指針」を策定
  2. 基本方針に基づいて都道府県知事が「農業振興地域整備基本方針」を策定し、農業振興地域を指定
  3. 農業振興地域のある市町村が「農業振興地域整備計画」を策定し、農用地区域と土地の用途区分を指定

農用地区域

農用地区域とは、市町村が策定する「農業振興地域整備計画」において、今後10年以上の長期にわたり農業上の利用を確保すべき土地の区域として定められているものをいい、具体的には以下のような土地が指定されています。

  1. 10ヘクタール以上の集団的な農用地
  2. 土地改良事業又はこれに準ずる事業の対象区域内にある土地
  3. 地域の特性に即した農業の振興に必要な土地
  4. 農道、かんがい排水施設等の土地改良施設用地
  5. 農業用施設用地

農用地区域内の農地等は都市計画税が非課税になるなど、税制上の優遇措置があります。また、国の補助事業(土地改良事業など)も農用地区域を中心に行われます。

農振除外申請手続き

農用地区域内の農地等は、原則として、整備計画において指定された用途(農地、採草放牧地、混牧林地、農業用施設用地のいずれか)以外の用途に使用することができません。従って、やむを得ず農用地区域内の農地等を宅地、駐車場、資材置場等に転用したい場合は、農地法に基づく農地転用許可に先立ち、整備計画を変更し、当該農地を農用地区域から除外する手続きが必要となります。 それを「農振除外」といいます。

申出

市町村に対し、整備計画を変更して、転用を予定している農地等を農用地区域から除外して欲しい旨を申し出ます。市町村により申出の受付時期や必要書類が異なるので、当該農地等が所在する市町村に必ずご確認ください。

受付後の流れ

市町村は、庁内での調整及び都道府県知事との事前協議を経た上で、整備計画の変更案を公告し、縦覧に供します。そして、所定の期間内に、

  1. 変更案に対する異議が申し立てられなかった場合
  2. 異議が申し立てられたが当該異議に対して市町村の決定がなされた場合
  3. 市町村の決定に対して不服が申し立てられたが当該不服申立てに関して都道府県知事の裁決がなされた場合

に、市町村は都道府県知事と本協議を行い、その同意を得た後、変更された整備計画を公告します。

農振除外の基準

以下の要件全てに該当することが必要です(農振法第13条2項)。

  1. 当該農業振興地域における農用地区域以外の区域内の土地利用の状況からみて、当該変更に係る土地を農用地等以外の用途に供することが必要かつ適当であって、農用地区域以外の区域内の土地をもって代えることが困難であると認められること。
  2. 当該変更により、農用地区域内における農用地の集団化、農作業の効率化その他土地の農業上の効率的かつ総合的な利用に支障を及ぼすおそれがないと認められること。
  3. 当該変更により、農用地区域内における効率的かつ安定的な農業経営を営むものに対する農用地の利用の集積に支障を及ぼすおそれがないと認められること。
  4. 当該変更により、農用地区域内の土地改良施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがないと認められること。
  5. 当該変更に係る土地が農振法第10条第3項第2号に規定する事業(土地改良事業等)の工事が完了した年度の翌年度から起算して8年を経過した土地であること。

上記のほか、農地法に基づく転用許可や、その他の法令の許認可を得る必要がある場合については、その許可がなされる見込みがあることも要件とされています。